作業療法士の資格が理学療法士と何が違うのか、この資格試験合格率、おすすめテキスト、参考書や問題集などを解説していきます。
本記事でわかること
上記の内容について解説していきます。
作業療法士とは?
作業療法士とは「体」のリハビリだけではなく「心」のリハビリもおこなう専門家です。
作業療法士が理学療法士と異なる点としては、作業療法士はそううつ(躁鬱)病及び摂食障害などの精神的な障害がある患者もリハビリの対象としているところです。
作業療法士は、入浴や食事など日常生活の動作や、手工芸、園芸及びレクリエーションまで、あらゆる作業活動を通して体と心のリハビリをおこないます。
その他にも例えば、編物、手芸、織物、陶器、人形づくり、銅・革・竹細工、木工、金工、園芸、農耕、芝居、音楽演奏、ゲーム、スポーツなどの中から、患者が積極的に参加できる種目を選び、その作業を通して機能の回復を計ると同時に家庭や社会への適応回復能力を高めていきます。
作業療法士と理学療法士の違い
理学療法士と作業療法士は、どちらも医学的リハビリテーションの専門職です。
ここでは理学療法士・作業療法士それぞれの仕事内容や資格の特徴について解説していきます。
関連資格:理学療法士とは?
資格の違いとは?
理学療法士・作業療法士は「セラピスト(therapist)」と呼ばれることがあります。
therapistの語源はtherapyで「長期間にわたる病気・ケガの治療」という意味を含む言葉です。
「障害の回復を目指す」共通項はありますが、治療上のアプローチ方法に合わせてそれぞれ異なる資格が設けられています。
作業療法士(OT)とは
作業療法士(Occupational Therapist)は、日常生活や社会生活そのものに着目して、心身の機能回復を目指す職種です。
「Occupational」の直訳は職業ですが、日本作業療法士協会では「人々にとって目的や価値を持つ生活行為」を作業と定義しています。
障害の内容に応じて作業メニューを組み立てて、患者や利用者が希望する生活を目指した支援を行います。
2020年3月末現在、日本作業療法士協会に所属する作業療法士は62,294人で、理学療法士の約半分です。
医療機関で勤務する人が半数以上(約35,000人)で、その多くが脳血管疾患や精神疾患のケアに携わっています。
心身の変化に応じて作業メニューを柔軟に変えていくため、幅広い観察力が必要です。
理学療法士(PT)とは
理学療法士(Physical Therapist)は、物理的なアプローチで患者の身体機能の回復を目指す職種です。
具体的には、障害の内容に応じて体の一部分を動かしたり、電気や熱などのエネルギーを加えたりする治療を行っています。
2020年10月末現在、日本理学療法士協会に所属する理学療法士は129,396人で、うち約6割(84,618人)が病院・診療所などの医療施設で勤務しています。
体の動作そのものに精通していることから、スポーツチームなどに所属し、選手のパフォーマンス向上に取り組む理学療法士も出始めました。
マッサージに代表される「手技」では、理学療法士が自ら物理的な力を加えるため、相応の体力が必要です。
理学療法と作業療法の共通項と違い
理学療法と作業療法には「障害の回復を手助けする」という共通項がありますが、治療に活用する道具やアプローチ方法は異なります。
作業療法士 | 理学療法士 | |
対象 | 身体・精神どちらの 障害にも対応 | 身体障害が メイン |
治療への アプローチ | 患者と合意の上で 決意 | 運動や物理的エネルギーを 用いた手段 |
医師からの指示 | 必須 | 治療補助行為 以外では不要 |
作業療法とは
作業療法では作業活動を通じて、日常生活や社会生活に必要な指導や援助を行います。
創作的活動や生活活動のように、作業活動の種類は数種類のカテゴリーに分かれていますが、治療プログラムの作成にあたっては患者や家族の希望が尊重されるのが特徴です。
必要に応じて、装具や補助具を自作して支援にあたることもあります。
業務にあたっては、口頭や書面による医師の指示が必須であり、医師の指示がない業務では作業療法士を名乗ることができません。
そのため、医師の指示を受けずに作業療法士としての知見を活かす場面では、組織ごとの職名を名乗って業務を行っているのが実態です。
理学療法とは
理学療法では、体の基本的動作能力を回復させるために、障害の度合いに応じて理学療法士が選択した運動療法と物理療法を活用します。
関節可動域運動や筋機能回復運動といった運動療法では、患者の体を直接動かして治療を行います。
物理療法は、障害のある部分に熱や電気などのエネルギーを加えて、循環の改善や痛みの緩和を目指す治療法です。
業務にあたっては医師の指示が前提となりますが、身体に障害のない人に対して介護予防の技術などを指導する場合には、医師の指示を受ける必要はありません。
作業療法士になるには?
作業療法士になるには、高校卒業後、文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した養成校(養成施設)で3年以上学習し、必要な単位を取得後卒業して国家試験の受験資格を得なければなりません。
その後、国家試験に合格してはじめて作業療法士になることができます。
養成校は次の4種類です。
- 4年制の大学
- 3年制の短大
- 3年制または4年制、夜間の専門学校
- 特別支援学校(視覚障害者が対象)
仮に大学を目指す場合、受験生は作業療法士を敬遠する傾向があるので、同じ大学で学科が分かれているようであれば、作業療法士の方がボーダーラインが低いようです。
どちらでもかまわいのであれば、作業療法士の方が入りやすいようです。
通信講座や通信教育で作業療法士の受験資格は得られません。
必ず養成校へ通って学習します。
作業療法士資格の概要を詳しく解説していきます。
ホームページ・受験申込・問合せ
- 厚生労働省
- 作業療法士国家試験運営本部事務所
03-6659-9687 - 厚生労働省医政局医事課試験免許室
03-5253-1111(内線:2574、2575、4143)
受験資格
- 学校教育法(昭和22年法律第26号)第90条第1項の規定により大学に入学することができる者
(法第12条第1号の規定により文部科学大臣の指定した学校が大学である場合において、当該大学が学校教育法
第90条第2項の規定により当該大学に入学させた者又は法附則第6項の規定により学校教育法第90条第1項の規定に
より大学に入学することができる者とみなされる者を含む。)で、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に
適合するものとして、文部科学大臣が指定した学校又は厚生労働大臣が指定した作業療法士養成施設において、
3年以上作業療法士として必要な知識及び技能を修得したもの(修業し、又は卒業する見込みの者を含む。) - 外国の作業療法に関する学校若しくは養成施設を卒業し、又は外国で作業療法士の免許に
相当する免許を得た者で、厚生労働大臣が(1)に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定したもの - 法の施行の際(昭和40年8月28日)現に文部大臣又は厚生大臣が指定した学校又は施設において、
作業療法士となるのに必要な知識及び技能を修業中の者であって、法施行後に当該学校又は施設を卒業したもの
願書申込み受付期間・受験料
- 12月中旬~1月上旬頃まで
- 10,100円
身体上の障害等に係る特別措置について
視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能に障害を有する者で受験を希望する者は、指定された日までに作業療法士国家試験運営本部事務所に「国家試験の受験に伴う配慮事項申請書」を用いて申し出ることで、受験時に申請した障害の状態に応じて必要な配慮を講じてもらえます。(点字試験、読み上げ試験、試験時間延長の詳細はこちら)
試験内容
筆記試験
- ① 解剖学
- ② 生理学
- ③ 運動学
- ④ 病理学概論
- ⑤ 臨床心理学
- ⑥ リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む。)
- ⑦ 臨床医学大要(人間発達学を含む。)
- ⑧ 作業療法
実技試験
- ① 運動学
- ② 臨床心理学
- ③ リハビリテーション医学
- ④ 臨床医学大要(人間発達学を含む。)
- ⑤ 作業療法
口述・実技試験
- 点字試験受験者に対して、実地問題に代えて上記の科目について行う。
試験日程・受験地
筆記試験
- 2月中旬頃
- 北海道、宮城、東京、愛知、大阪、香川、福岡、沖縄
口述試験及び実技試験
- 2月下旬頃
- 東京
合格基準
以下全ての基準を満たした者が、合格となります。
- 総得点のおおよそ60%以上の得点率
- 実地問題のおおよそ35%以上の得点率
作業療法士試験合格率
作業療法士試験の受験者と合格率は以下になります。
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2021年 | 5,549人 | 4,510人 | 81.3% |
2020年 | 6,352人 | 5,548人 | 87.3% |
2019年 | 6,358人 | 4,531人 | 71.3% |
2018年 | 6,164人 | 4,785人 | 77.6% |
2017年 | 5,983人 | 5,007人 | 83.7% |
試験の合格率は8割程度と、理学療法士にくらべてやや低くなっています。
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- 4.クリアカットな解説によって短時間で反復学習ができます。
- 5.近年3回分の国家試験問題とマークシートが別冊でついています。
作業療法士まるごとガイド: 資格のとり方・しごとのすべて
日本作業療法士協会により作業療法士について解説した本です。
特に理学療法士と作業療法士の違いとは何かがよくわかるように解説されているので、迷っている人には参考になります。
学校の選び方などの解説も役立つでしょう。
国家試験についてや男女比など基礎的データも充実しています。
年収・給与面は他の医療系の資格との比較も含めて詳細に書かれています。
多くの作業療法士の仕事ぶりを紹介したインタビューも豊富で、現実と本音がかなりわかります。