理学療法士は平成29年度の時点で既に15万人以上の有資格者がいますが、さらに毎年1万人以上のペースで新人理学療法士が誕生しています。
これだけのペースで増え続けていけば、近い将来に、供給過剰で飽和状態になるのでは、心配する声が多くあるようです。
このページにたどり着いたあなたもそう思っていませんか?
そんなあなたにおすすめするのは、「認定理学療法士」になることです。
現段階では、「給料アップやキャリアアップに繋がらないなら、取得するメリットはない」と思う方はいるはず。
そんなあなたにお伝えしたいのは、長期的にみれば給料アップやキャリアアップの可能性が高いということです。
本記事でわかること
- 理学療法士は飽和状態?
- 認定理学療法士とは?
- 認定理学療法士の資格を取る3つのメリットとは!?
- 認定理学療法士になるには?
上記の内容について解説していきます。
理学療法士は飽和状態?
理学療法士は、ほんの10数年前くらいまでは理学療法士の数が少なく、養成校の数も少なかったため、今より理学療法士の需要が高く高給だった時代もありました。
理学療法士は引く手あまたで就職先に困ることなんてありえませんでした。
ところがその後、理学療法士の養成校設立についての規制が緩和され、全国で養成校が増え続け、毎年多くの理学療法士が世に送り出されるようになりました。
それにともない理学療法士の数が増え続け、比例するように初任給が年々減少しました。
しかも著しい高齢化社会の進行により、医療費や介護給付費が急増して自治体の財政を圧迫して診療報酬が徐々に引き下げられていれば大幅な定期昇給などもほとんど見込めないのが現状です。
そんな理学療法士におすすめするのが「認定理学療法士」資格の取得です。
関連資格:理学療法士になるには?
認定理学療法士とは?
認定理学療法士とは、日本理学療法士協会が認定している資格制度で、理学療法士の専門性をより高めていくことを目的とした国家資格です。
日本理学療法士協会は、生涯学習の一環として7つの専門分野23の領域から1つ以上を選び、認定理学療法士を目指すことを推奨しています。
以下が認定理学療法士の分野と領域です。
基礎理学療法専門分野
- ①人を対象とした基礎領域
- ②動物・培養細胞を対象とした基礎領域
神経理学療法専門分野
- ③脳卒中
- ④神経筋障害
- ⑤脊髄障害
- ⑦発達障害
運動器理学療法専門分野
- ⑦運動器
- ⑧切断
- ⑨スポーツ理学療法
- ⑩徒手理学療法
内部障害理学療法専門分野
- ⑪循環
- ⑫呼吸
- ⑬代謝
生活環境支援理学療法専門分野
- ⑭地域理学療法
- ⑮健康増進・参加
- ⑯介護予防
- ⑰補装具
物理療法専門分野
- ⑱物理療法
- ⑲褥瘡・創傷ケア
- ⑳疼痛管理
教育管理理学療法専門分野
- ㉑臨床教育
- ㉒管理・運営
- ㉓学校教育
認定理学療法士の資格取得後も、知識や技術を維持し高度な専門性を保てるように、5年ごとに資格の更新が義務づけられています。
認定理学療法士には、臨床技術や知識を高さだけではなく、理学療法の発展に貢献できる研究能力が求められます。
認定理学療法士の取得者数は全国にどのくらいいるのか調べてみました。
日本理学療法士協会のデータによると、2020年10月時点での総会員数は129,396名、そのなかで認定理学療法士の取得者数は10,271名。
取得者は全体の10%ほどという割合で、決して多いといえる数ではありません。
認定理学療法士制度は2010年よりスタートされ、まだ始まって10年ほどと比較的新しい資格制度ですが、認定理学療法士の取得率が増えない理由は他にもあります。
それは、資格を取得するメリットが少ないということです。
でわ、どんなメリットがあるのか解説していきます。
関連記事:公認心理師になるには?臨床心理士との違いってどう違う?
認定理学療法士の資格を取る3つのメリットとは?
豊富な知識を得られる
認定理学療法士の資格を取得するには、一定数の学会や講習会などへの参加が必要不可欠です。
そのため、資格を取得していない理学療法士よりも豊富な知識を得ることができます。
得た知識はすぐに臨床で活かせるため、より質の高いリハビリテーションの提供に繋がります。
やる気が向上する
就職してすぐの理学療法士はやる気に溢れていますが、数年経つとやる気は薄れて目標がないという方は多くなります。
しかし「認定理学療法士を取得する」という目標を立てることで達成に向けてモチベーションがあがり、仕事に対してのやる気が向上します。
転職に役立つ
資格を取得しておくことで、転職の際に有利に働きます。
転職に必要な履歴書の資格欄に記載でき、他の理学療法士よりも優れているというアピール材料になり採用率があがります。
上記のメリットでは、あなたは認定理学療法士を取得するメリットが弱いと思ったかもしれません。
しかし、資格の取得を目指すことで理学療法士としてスキルアップすることは間違いありません。
また、認定理学療法士が少ない今だからこそ、他の理学療法士との差別化が図れるということは大きなメリットといえます。
とはいえ、資格を取得し保持し続けるにはお金も時間もかかります。
「給料アップやキャリアアップに繋がらないなら、取得するメリットはない」と思う方はいるはず。
そんなあなたにお伝えしたいのは、長期的にみれば給料アップやキャリアアップの可能性が高いということ。
理学療法士協会は診療報酬のアップや医療広告ガイドラインへの登録など、認定理学療法士の価値を高めようとしています。
今後「この病院には認定理学療法士が在籍しています!」と広告を出すことが可能になれば、認定理学療法士に特別手当がつくようになるはずです。
近い将来のキャリアアップを見据えて、今のうちに資格を取っておくことをおすすめします。
関連記事:理学療法士になるには?理学療法士の養成校はどこが良い?
認定理学療法士になるには?
認定理学療法士になるには、いくつか満たさなければならない条件があります。
申請の条件についてや取得までの流れについて解説していきます。
申請条件
以下は認定試験の申し込みに必要な申請条件です。
合計180Pを取得すると、試験の申し込みが可能となります。
- 新人教育プログラムが修了していること(20P)
- 希望領域を含む専門分野登録をしてから2年以上経過していること
- 希望領域に該当する有効期限内の認定必須研修会を受講していること(20P)※
- 有効期限内の協会指定研修を受講していること(40P)※
- 上記の条件を全て満たし、かつ上記とは別のポイントとして、各領域の履修要件に即したポイント100Pを取得していること。(100P)
※認定必須研修会・協会指定研修の有効期限は、研修会受講年度の4月1日から5年間です。
認定理学療法士のポイント取得についての詳細は、日本理学療法士協会の「認定理学療法⼠(新規申請用)ポイント取得マニュアル」にてご確認ください。
認定理学療法士の資格取得までの流れ
- 新人プログラムの修了
- 希望領域を含む専門分野の登録
- 研修受講などによるポイント取得
- 症例報告(10例)の提出
- 申請手続き
- 認定試験
新人教育プログラムを修了する (20P)
このプログラムは、新入会員全員を対象としています。
最短1年のうちに修了可能です。
専門分野の登録をする (2年)
認定試験を受験するには、1つ以上の専門分野の登録と登録後2年が経過していることが必要です。
ポイントを貯める
認定必須研修会(20ポイント)
専門分野ごとに決められた講習会です。
各分野の専門内容の講義が中心となります。
※認定必須研修会の詳細についてはこちらでご確認くだいさい。
協会指定研修(40ポイント)
専門分野には関係なく、共通して受講が必要な研修です。
歴史やリスク管理、エビデンスや労務関係といった内容の講習となります。
※協会指定研修の詳細についてはこちらでご確認ください。
その他学会、講習会(100ポイント)
専門分野に沿った内容の学会・講習会であることが条件です。
学会や講習会の内容によって、獲得できるポイント数は異なります。
各自で計算し合計100ポイントをためます。
学会発表もポイントの対象となります。
※その他学会、講習会についてはこちらでご確認ください。
症例報告(10症例)
指定された様式で、資格取得を目指す分野の症例報告を10症例作成し提出します。
1症例につき1000文字~1200文字程度が目安となっています。
申請
下記の書類を揃えて申請をおこない、通過できれば認定試験の受験が認められます。
申請料: 領域につき 7,560 円(書類審査料、認定試験受験料含む)
申請書類:申請書・誓約書・症例報告書(10 症例分)・ポイントを証明する書類のコピー(必要な方のみ)
認定試験
過去の試験問題や解答、審査内容は明かされていません。
そのため、必須研修会や指定研修の内容、日々の臨床で得た知識をいかに吸収しているかが合格を左右します。
※症例報告・申請方法・認定試験についての詳細は、こちらからご確認ください。
認定理学療法士資格の更新について
認定理学療法士の資格を持ち続けるには、5年毎の更新が必要となります。
更新の条件
- 1領域につき160ポイントの履修ポイントの取得
- 10例の事例・症例報告レビューレポートの提出
- 申請書類の提出
まとめ
認定理学療法士の資格は、すぐにキャリアアップに繋がる資格ではありません。
しかし、今後必ず評価される資格になることは間違いと思います。
認定理学療法士を取得することでより高い知識と技術を身につけることができ、ゆくゆくはキャリアアップ・収入アップに繋がることを考えれば、今取っておくべき資格だと思いませんか?